日 時:
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平成30年2月23日 午後5時開演
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会 場:
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犀北館ホテル 2階サロン
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講演:
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演題 「世界の中の日本 〜地方発の企業が日本を支える〜」
講師 長野県立大学 理事長予定者 安藤 国威 氏
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▲長野県立大学理事長 安藤国威氏
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▲講演の様子
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▲会場の様子
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▲会場の様子
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▲講師紹介 ミールケア関社長
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▲進行司会 たちばな専務
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<講演要旨>
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大学を卒業してから見聞を広めるため海外旅行をしていた時期があります。ニューヨークの5番街で日の丸を掲げているオフィスを見つけました。60年代後半のことで非常に珍しく、帰国後その会社ソニーに入社しました。入社時はしばらく経験を積んだらスピンアウトするつもりでしたが、井深大や盛田昭夫と一緒に仕事をするようになり、仕事が楽しくなり現在にまで至りました。新しいことに挑戦し、楽しくなる仕事をし、理想工場を目指す社風が数々の新製品を世の中に出してきました。入社当時は業界初の製品を出すことを「ソニーはモルモットである」と揶揄する声もありましたが、ソニーの成長を支えたのは、絶え間のないイノベーションであると確信しています。私がかかわったのは革新的なビジネスモデルを確立したソニー・プルデンシャル生命保険やパソコンVAIO,携帯電話、デジタルカメラなどになります。
リーマンショック以来、技術力で勝る日本のメーカーが事業で負けていることが多くなりました。これはフラット化する世界、グローバル化に対応が出来ていないからです。具体的には、デジタル化やモジュラー化、水平分業が進むという競争のルールが変わったのが一つ目の理由です。二つ目に欧米からBRICSやアジアに競争相手が変わったこと、三つ目に先進国から新興国に市場が変わってしまったからです。ただ私は日本からイノベーションが興らなくなってしまったことが最大の要因だと考えています。イノベーションが興ることを阻害する要因は、成功モデルへの固執、短期業績へのこだわり、顧客の本質的ニーズとのズレ、現場のアイデア無視、内部リソースへのこだわりの五つです。イノベーションとは、価値発見、コンセプトの確立、事業モデル化という創造性の部分と、事業プランの作成、ファイナンス、立上という効率性・生産性からなり、その後発展していくものです。発明と洞察の両方が大切であり、技術起点と価値起点での考察も必要で、経済的・社会的価値がなければいけません。
イノベーションを興す人財がいないのかというとそんなことはありません。海外の方は日本の若者をクリエイティブだと思っています。問題は日本人自身が思っていないことです。また日本の若者は海外の若者に比べて社会貢献意欲が高いのですが、自分が出来ると思っていないのが日本人です。日本の若者のポテンシャルは高いのですが、現状は活かす場所がないと言えます。
そんな日本に今チャンスが巡ってきています。第四次産業革命で頭脳労働を大きく変えるエマージングテクノロジーになります。具体的にはIoT、AI、ロボット、自動運転、3Dプリンター、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、材料科学などで生産性を大きく向上させることになります。IoTはハードとソフトの融合になりますので、日本の長所であるセンサーや電子部品が重要になります。ブロックチェーン技術の普及も世の中を変えると思います。これらの技術を企業経営に取入れることが重要になり、本日お集まりの方の会社も生産性を向上させ会社を大きく発展させるキーポイントになると思います。世界に会社の時価総額を見ても10年単位で入れ替わっていることがわかります。今はグーグル、アップル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックの5大プラットフォーマーが上位ですが、以前はGE、IBM、GM、フォードなどが上位にいました。第四次産業革命が興りつつある現在は日本にとっても、日本中の会社にとっても大きなチャンスを迎えています。
新しい産業を生み出すうえで産官学の連携は重要です。4年前に阿部知事からグローバルな視野を持ち、イノベーションを興せる人材を育成したいという要望を受け長野県立大学の設立にかかわってきました。長野県内の様々な企業を訪問させていただき、意見交換をしてきました。少人数教育、1年次全寮制、2年次全員海外留学、1年4期制などの特色を持った大学としてこの4月開校します。ソーシャルイノベーション創出センターも創設することが出来ました。
長野県の活性化のために2つ提案させていただきます。一つ目が宮崎・バングラディシュモデルです。JICA、宮崎市、地域IT企業、宮崎大学が連携して、バングラディシュの優秀な人材を宮崎へ導入しています。現地では希望者が非常に多く人気の事業です。
二つ目は岐阜県で導入した「さるぼぼコイン」です。中国ではアリペイが非常な勢いで普及しています。これは地域通貨ですが、今日参加の企業を中心に導入できると思います。2つとも長野活性化になるつながる事業だと考えます。
最後に第四次産業革命はAI、ロボットなど人間の仕事を奪うものだと危惧する方もおられるかもしれません。そうではなく人間の選択の幅を広げ、より好ましいライフスタイルを創出するチャンスととらえていただきたいと思います。イノベ―ションが仕事や生活の多様化をもたらすことになります。自然を楽しみ、暮らしながら働く、土地に根付いた生活、豊かで人間らしいライフスタイルを取り戻すことが出来る産業革命になると思います。
(文責/関 隆之)
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