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トイレ掃除で有名なイエローハット創業者の鍵山秀三郎さんは「社員は指示命令で働くのではなく、社風で働く」とおっしゃいましたが、まさにその通りで社員は良い社風により、より良い自分の判断を下せるのだと思います。 タクシーはお客様が望まれるところへ運転して行くのが仕事で、非常に単純な仕事になります。夢やロマンが生まれにくい仕事です。創業時は許認可運送業ではなくサービス業であると言っていました。一般にサービス、ホスピタリティ、おもてなしなどが良く使われる言葉ですが、現在当社では一切使いません。代わりに運転を通してお客様の人生に触れる仕事であり、お客様の人生を守る仕事であると言っています。これを説明することにより使命感を持ってもらい、お客様から感謝や感動の手紙や電話が寄せられる仕事をしてもらっています。当社ではこれを「伝説の仕事」と呼んでいます。 中央タクシーは車両116台、従業員230名の会社です。他社と比べて3つの特徴があります。ひとつ目はジャンボタクシーが過半数の70台あることです。普通は数台しかありません。平成11年から最初は2台で「空港便」を始めました。お客様のフライト時間に合わせて1名から、自宅から羽田や成田の搭乗口までお送りします。電車の駅までの移動が不要ですし、前泊後泊の必要もありません。大きなスーツケースを運ぶのも楽ですし、冬物コートなど旅行先で要らない荷物のお預かりもしています。長野県のほか、新潟県と群馬県で毎日50台年間10万人のご利用があります。「家からの旅」というタクシーを使った旅行業も好評です。普通は旅行業者の下請けが多いのですが、独自に企画しています。事前に申し込みを受け、現地の桜が咲いたら出発するという企画は大好評で前年比10倍になりました。満開の桜や幻想的なライトアップを見た方の口コミの効果です。オーストラリアの方が白馬や野沢のパウダースノーを求めて来日する数が急増しています。12月から3月まで長野駅からスキー場までジャンボでピストン輸送になります。今タクシーは増車できませんし、運賃も自由になりませんが、ジャンボは届出だけで済み、経営の自由度が大きい当社の武器になっています。 ふたつ目の特徴は離職率が低いことです。タクシー業界は離職率が高く、人手不足で、会社を渡り歩く人も多い業界です。仕事量がバブル期の半分になり、地方の会社は売上が少なく、さらに人が来ない労務倒産の可能性も高くなっています。当社は離職率が低く、生産性も高い会社です。1年だけ務めるつもりだったAさんは仲間と一緒にやりたくて定年後も嘱託で7年務めました。腰を痛めて復帰できないと心配していたBさんは仲間の励ましで腰痛を1か月で直して復帰しました。社内研修会を常に実施していますが、後の懇親会の雰囲気が非常に良く、良い人間関係が出来ています。企業は人間関係が大切だと実感できます。 みっつ目の特徴は数値目標、予算、ノルマがないことです。経理の月次決算はありますが、個人の目標数値はありません。台数規模はアルピコさんの200台、長野観光さんの160台に次ぐ3番目ですが、1台当たりの生産性は2.5倍あります。数値目標より「お客様が先 利益は後」の経営理念と毎日唱和する下記の憲章を大切にしています。 憲章 「我々は、長野県民・新潟県民の生活にとって必要不可欠であり、さらに交通弱者・高齢者にとってなくてはならない存在となる。 私達が接することによって「生きる勇気」が湧き、「幸せ」を感じ、「親切」の素晴らしさを知ってくださる多くの方々がいらっしゃる。 私達はお客様にとって、いつまでもこのうえなく、なくてはならない人としてあり続け、この人がいてくれて本当に助かりますと、思わず涙とともに喜んでいただける。 我が社はそんな人々によってのみ構成されている会社です。」 この理念・憲章と社風の良い人間関係さらにその人の人柄から生まれるのが冒頭申し上げた、お客様から手紙、電話でお礼をもらう「伝説」になります。初老のご夫妻を観光にご案内した時、ご主人が車酔いし、上着を汚してしまい捨ててくれるよう依頼されたCさんは、お気に入りの洋服に違いないとコインランドリーでクリーニングしてホテルへ届けました。子供が病気になったお母さんを乗せて保育園へ迎えに行き病院まで送り、お母さんが財布を落としてしまっていた時Dさんは、運賃は後でいただけるとしても病院の支払で困るだろうとお母さんが歩いた後を探し、探し出した財布を病院に届けました。東京から長野の高原の教会での結婚式に参加するため長野駅で乗車したお客様の子供が薄着で、冬物の靴下を買いたいと言われましたが店は開店前で式の時間の関係で買い物出来ませんでした。Eさんが途中まで戻ると店が開店していたため、靴下を購入し教会まで戻って届けました。3人とも自分の時間とポケットマネーを使っています。3人とも会社に戻って何も言わずお客様からのお手紙をもらったことでわかりました。 左足が思うように動かないお婆さんは、病院に行くためタクシーを使うのですが、運転手さんの態度の悪さに気持ちが暗くなっていました。病院で隣に座った方から中央タクシーを勧められて使い始めると、「来る人皆さんから本当に心から親切にしてもらってタクシーを呼ぶのが楽しみになった」とお電話をいただきました。 「残り少ない命、幸せをくれてありがとう 中央さん」というお手紙をいただいたこともあります。手紙に住所はなかったのですが、社員があのお婆ちゃんだろうという自宅をお訊ねすると「本当のことを書いただけですよ」と迎えていただき、「町で中央タクシーを見ただけで幸せな気持ちになります」という言葉で送ってもらいました。 理念や憲章は私が作りましたが、暗唱できませんし、作った時は半信半疑でした。良い人間関係の良い社風と理念や憲章の浸透が「お客様の人生を守る仕事」をする社員につながり経営者冥利に尽きます。 (文責/関 隆之) |
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