地域商業文化を創造する会 2月星野社長特別講演会

日 時:

平成18年2月10日(金) 午後5時開演

会 場:

犀北館ホテル

議 亊:

1.会長挨拶  武井 哲夫

2.講演 演題/M&Aや企業再生と経営戦略理念について
    講師/星野リゾート社長 星野 佳路氏

3.副会長謝辞  諏訪 勇


▲星野リゾート社長 星野 佳路氏

 本日の講演会の演題を「リゾート再生への挑戦」とさせていただきましたが、これはすべての案件が成功しているわけではなく、現在進行中の物件もありますので「挑戦」という表現を使いました。

 軽井沢の歴史を紹介させていただきますと、1938年まではクラフトショーを始めとする欧米人と経済界や作家等の方の避暑地として発展しました。星野温泉も1904年にオープンしており私が4代目になります。1952年までは戦争という特殊要因のため、疎開してきた人たちによりにぎわっていました。

戦後から1975年までは国内旅行が盛んになった時期でJTBさんの創業もこの時期にあたります。需用の拡大期であり、施設を作ればお客様が来てくれた時代です。特に軽井沢は毎年天皇陛下が避暑に訪れることから知名度が上がりました。誰かが仕掛けたわけでもなく、偶然の積み重ねにより知名度が上がったわけで、私は「奇跡のブランドー軽井沢」と呼んでいます。軽井沢は年間8百万人が訪れる観光地になりました。

1975から91年は海外旅行がブームになりました。年間17百万人が海外に行きます。海外からの観光客は6百万で日本は観光後進国です。ちなみにフランスは7千万人、スペインが5千万人、アメリカ、イタリア、中国も3千万人以上が訪れます。これらの観光先進国では観光が一大産業になっています。比べて日本の温泉旅館90万室の稼働率は40%であり、軽井沢を訪れる人は8百万人のままです。

そのような時期にリゾート法ができたわけですが、リゾートには開発業者、所有者、運営者そして資金提供者の4つの役割が明示されました。そこで星野リゾートとしては、運営に特化し「リゾート運営の達人」になることに決めました。

75年からは供給が需要を上回り、コンセプトが大切になったわけです。軽井沢は避暑というコンセプトできたわけですが、エアコンと競争になり弱くなってしまいました。また避暑では夏しか商売ができません。80年代にタレントショップができましたが、原宿と変わらず消えてしまいました。

この人に来ていただきたいというコンセプトを作るため市場調査をし、高級別荘と別荘客をイメージすることにしました。このコンセプトに基づきホテルブレストンコートをつくり、コミニュティゾーンにとんぼの湯や村民食堂を作りました。この市場調査からは、温泉は好きだが旅館は嫌いという日本人の姿も浮かび上がってきました。海外でのリゾートを体験した方が旅館の前近代性を嫌っています。そこで星のや軽井沢をオープンするに当たって「温泉旅館道を極める」をコンセプトにし、「世界水準への挑戦」をスローガンにしました。具体的には、時間の拘束の排除、食のバリエーションの多様化、温泉文化の強化を目指しました。

「リゾート運営の達人」になるために3つの条件を設定しました。顧客満足を7段階で評価し満点3最低―3に対し2.5を目指す。オーナーに対して利益を出せるように利益率20%を目指す。環境に配慮するため水力発電や地熱暖房を採用し、採算は合わせながらエネルギーの自給率を高める、の3つです。

さらに社員が自ら達人になれるよう5つの仕組みを作りました。顧客満足を高める仕組みを例にしてお話しますと、顧客満足度と利益額の2つから社員の決算賞与が自動的に決まる仕組みが作ってあります。顧客満足度は少しずつしか向上させることができませんが、売上や利益の向上と正の相関関係があります。向上させると組織の文化になるため下がるときも少しずつになり経営が安定します。取り組みが進みますと、ミス撲滅委員会を作ります。小さい本人しかわからないミスを報告することにし、ミスの報告が多いほうが良いとしています。原因をまとめますと、仕組みや設備の改善点が判明し、ミスがまとまって減らせます。

ところが顧客満足を追求しすぎると、過剰投資になってしまうケースが出始めました。「顧客満足は本当に必要か?」というテーマが出てきてしまい、利益と顧客満足のバランスを科学的なアプローチで捉えることにしました。宿泊業には食材費、人件費、広告費の3大コストがありますが、食材費ならば、朝食と夕食のどちらにお金をかけるべきか、何品目にお金をかけるべきかデータを取ることにしました。また広告費を少なくするにはリピート率を上げればいいわけですが、効果的な項目を探しました。するとわかってきたことがたくさんありました。リピート率を上げるためには中途半端はダメであるとか、効果があるのは調査項目の半分以下だったことがわかってきました。たとえば予約業務はお客様に不満を与えなければいいといったことです。改善目的により大切な項目があり、ヘビーユーザーには85点取れれば良いということもわかりました。CRM戦略にはどんなデータを蓄積するかが重要で、満足度が高い方の具体的な不満を蓄積し、次回に生かすのが大切なポイントです。

リゾート再生の話に変えますが、再生に当たり、一番大切なのは経費削減ではなく、売上増加策です。財務調査は始めにしますが、そのあとの市場調査とそれに基づくコンセプト作りに力を入れます。コンセプト委員会を作り、誰に何をどのようにといったコンセプトを作ってもらいます。正解は3,4個ありますがスタッフに選んでもらいます。これは人はやりたいことをやるときに力を発揮するからです。

リゾナーレ小淵沢は大人が楽しむファミリーリゾートというコンセプトでしたが、温泉がなく170室と小さかったため、ターゲットを狭めて特化するニッチ戦略をとりました。12歳以下の子供を持つファミリーを対象にお父さんの家族サービスとお母さんの思いで作りをコンセプトにしました。子供には一日遊べる施設を作り、親にはくつろげるスパやブックアンドカフェを作りました。食事を例にすると子供にはすぐ食べ物を出し、45分後から預かります、両親には一時間半かけて楽しんで食べてもらいます。昨年は売上が130%と伸びましたし、今年は決算賞与も出せるようになりました。

アルツ磐梯リゾートは東北最大のスキー場です。40万人を集客する必要があるためスキー場として強化することにしました。全部のセグメントから共通の要素を集め、うまくなりたいという来場者すべてに対応する「プレイヤーサポート」をコンセプトにしました。スキースクールを直営にし、一度でやめてしまう人が多いことに対応した初心者無料レッスンや上達しなければレッスン料を返金する上達保証付レッスンを始めました。講師が一度に教える人数を自ら5名くらいに減らして親切に対応するようになり、スキースクールは売上が増えました。まずいことが多いスキー場のレストランですが、美味しさ保証付カレーを導入したところ6万食を販売し、6件の返金は発生しましたが、25%売上が増加しました。お客様に対するコミットメントが社員に対するコミットメントにもなり効果がでています。そのほかに囲い込み戦略もとっていますが、雪不足の昨年も利用客が増え、今年は利益を計上できます。

ゴールドマンサックスと星野リゾートが組んで温泉旅館の再生を手がけています。リゾートの運営に専念できるようになりました。山代温泉白銀屋、いずみ荘、古牧温泉グランドホテル、奥入瀬渓流グランドホテルの再生をしています。温泉旅館は、市場の変化、それに対応できない硬直化した経営、問題の多いマネジメント、バブル期の過剰投資、その後の投資不足、家族経営による経営資源の不足で苦しんでいます。

ところが、交通、安全、文化、知名度を備えたポテンシャルの高い観光資源です。日本人は温泉がすきで安定したお客はいますし、海外では体験できない施設で海外からのお客も導入可能です。雇用、農業、地方税収に貢献する重要性が高い産業です。これらの温泉旅館が持つ高いポテンシャルと改善点修正案を評価してくれたのがゴールドマンサックスでした。

これからも「リゾート運営の達人」として温泉旅館を再生し、社会に貢献してゆきたいと考えています。


地域商業文化を創造する会3月例会のご案内

日 時:

平成18年3月31日(金) 午後6時30分

会  場:

ホテルサンルート長野 TEL026-228-2222

会  食:

金龍飯店 TEL026-228-2111

講演会:

1.会長挨拶   武井 哲夫

2.議題
(1)今期のまとめについて
(2)来期の計画について
(3)その他

3.情報交換会  午後8時より

司会進行/ 例会委員長  渡辺  誠

連 絡:

※集合時間は厳守にてお願い致します。
※当日の出席の取消はご容赦下さい。

お願い:

※集合時間は厳守にてお願い致します。
※当日の出席の取り消しはご容赦下さい。

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