経営大学院は2003年に経済学部と工学部が協力して、社会人を対象に若里キャンパス内作られました。それまでは松本の経済学部におりましたが、設立時に長野に移りました。本日ご参加の平安堂様の長野店でもサテライト教室を開催させていただいています。
昨年は経済環境が大きく変化しましたが、食品業界も様変わりした年になりました。一年前の今頃、日本は食料危機になる、海外で買い負けし食糧の輸入できなくなるといわれ、実際に小麦粉やバターが値上がりしました。金融危機が表面化したころからこれに変わり、いくつか新しい現象が現れています。米食へシフトしており、おかずメーカーの業績が良いです。ハウスは生産が間に合わず、テレビCMをとめています。グリコも好調ですし、地元のホクトも最高益になります。外食から内食へのシフトも強烈で、スーパー等の食材の売上は良いのですが、外食産業は売上確保に苦労しています。中国製餃子の影響もまだ強く残っており、消費者が国内産、地元産を選ぶ傾向が続いています。メタボ検診の影響で低カロリーの食材が好まれる傾向も強くなっています。食のトレンドが大きく変わった一年でした。
レジメのミクロでみる食料問題から検討したいと思います。食品業界は人口減少、少子高齢化により、長期的に需要は減少せざるをえませんが、2000年を境に若者の一人当たりの食べる量が半減し追い討ちをかけています。食べる量が半分と言いますと、大げさなと思われるかもしれませんが、学生がコンパをよくやる松本の飲食店のご主人は最近の学生は同じ料理なのに半分は残すと断言しています。また全国の学生生協が軒並み赤字になっていまして、調べて見ますと一番の売れ筋のライスで大盛りの売上が極端に減っていました。売上数量が同じで単価が下落していました。「草食系男子 お嬢マンが日本を変える」(詳細は別紙、以下同様)や「婚活時代」という本を読んで見ますと納得できると思います。
まったく新しいダイエットが出たのも昨年です。今までは昨年のバナナダイエットのように、品を変えてのダイエットが主流でしたが、カロリーブックと呼ばれる記帳ダイエット形式の新しいダイエット法が現れました。これは「カロリーBOOK」という本ですが、食事ごとに消費歩数に換算し、ダイエットするというものです。メタボ検診が始まったことの影響も大きいです。表1の一日に必要なエネルギーを確認しますと、私のようにデスクワーク中心の人が必要なエネルギーは一般に考えられている以上に少ないことがわかります。逆に表2の油脂分を消費歩数に換算した表をみますと、チョコレートデニッシュやアップルパイ等のデザートのカロリーが思ったより高いことがわかると思います。このようなことがこの本に記載されています。売上の総量が減少し食品業界の伸びが期待できないことや、ホクトのキノコのような、カロリーがなくかさばるものが伸びることにつながっています。
マクロでみる食料問題に入りますが、小麦、米、とうもろこし、大豆が主要な作物です。日本人は4つとも食用作物だと思っていますが、食用作物は小麦と米であり、米はアジアが主になります。とうもろこしは飼料作物で家畜の餌であり、大豆は油糧種子で油をとるための作物と認識されるのが世界の見方になります。ですから小麦や米は遺伝子組替技術があってもまったく使用されていませんが、とうもろこしや大豆には生産高の80〜90%に使用されています。日本の基準では5%未満の混入であれば遺伝子組替作物ではないと表示して良い事になっているため、5%近くは入っていると思った方が良いと思います。
日本でのとうもろこしの消費はあまり多くないと思っている方がほとんどですが、米の2倍の2000万トン弱が輸入され、家畜の餌以外にも、コーンビーフ、コーンスターチ等の形でいろいろな食品に使われています。清涼飲料水の糖分はすべてとうもろこしですし、残ったミネラルは化粧品に、とうもろこしの芯もキノコの培地にとすべてが無駄なく使われています。バイオ燃料への使用が昨年話題になりましたが、アメリカのとうもろこしの価格維持を目指した政策のためであり、バイオ燃料の本命は藻になりそうです。とうもろこしの200倍の生産効率で、ブラジルのサトウキビも採算ぎりぎりになります。
穀物価格は旱魃や冷害の自然災害、補助金や輸出規制の各国政府の動き、為替変動等に大きく影響されてきましたが、近年は投機資金の介入やIT技術の進化にともなう在庫減少策の影響によりさらに価格変動が大きくなる傾向があります。
世界の農産物生産の表で16品目を用意しておきました。上段に一番目、下段に2番目の国名を入れるという表です。空欄が13個ありますが、該当する国名を記載できるようになっています。この空欄13個にはいる国名はすべて中国です。16品目中、10品目が世界一で、3品目が二位になります。この表をご覧いただくと良くわかりますが、アメリカと中国が世界の2大農業大国です。中国が工業化すると大変なことになると言われていますが、中国の農業生産性も格段に向上しておりそうはならないと思います。日本の農業従事者は1割になりましたが、米は余っています。
マスコミの話は話題性がある話中心になりますし、その時点の話題のみを取り上げる形になります。客観的なデータに基づく判断をすることや継続的にトレンドを見続けることが大切です。
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