有限会社村田商店の代表取締役社長で一茶納豆三代目の村田滋氏に「信州大豆ひとすじ 農家と共に歩む納豆づくり」の演題でお話ししていただきました。
戦前台湾で役人をしていた祖父が日本に引き上げて納豆を作り始めたのが家業の始まりです。山形や京都の親戚も同業を営んでいるので教えてもらったのかもしれません。
私が三代目として家業を継いだころから、食品スーパーの出店が加速しました。スーパーの販売力が強まり、バイヤーの指示で業界横並びの画一的な商品を低価格で販売する、まさに下請け企業になっていくところでした。
忙しく働いても売上が上がらず、利益も出ない状態で、廃業も考えているときに長野県産の大豆をサンプルとしていただく機会がありました。問屋さんから仕入れた大豆とは別に納豆を作ってみると優れた製品が出来、これにかけてみようと決心しました。
原料を問屋さんから仕入れると作柄のバラツキや異物混入のリスクは問屋さんが負担してくれるのですが小さな会社が一社で対応するのは非常に大変でした。松本を中心に契約栽培を始めましたが、自然相手の農業は天候により左右されなかなか品質や収量が安定しませんでした。今は強い信頼関係が出来、当社の強みになっています。小石や砂が混じる異物混入対策にも苦労しました。収量を上げるため、手作業で選別を行ったこともあります。投資が大きく悩みましたが、石の選別機や色彩選別機を導入しました。品質維持のためにはコストがかかります。
毎日食べても飽きることのない納豆作りを目標にして努力してきた結果、平成25年2月開催の第18回全国納豆鑑評会において、最優秀賞にあたる農林水産大臣賞をいただきました。昨年は大豆の出来が良くなかったのですが、優秀賞をいただきました。儲けよりも品質を重んじる職人の心を持ち、努力していきたいと思っています。
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