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世の中に経営の本は数多くありますが、大切なのは本に述べられている経営手法を如何にして自分のものにするか、如何にして実行するかどうかだと思います。会社経営や仕事というものは一生懸命にやることが大切です。やろうと言う意思が大切ですし、やり遂げることが大切なことです。トップには問われるものがあります。何が問われるかと言いますと、基本的な生き様であり、基本的な理念です。これが社員の仕事に対する動機付けになります。ですから社是や経営理念として明確にしておく必要があります。 私が当社に入ったときは、赤字続きで実質銀行管理下の会社でした。社員は17名で、モーターも4台しかありませんでした。最初の10年間は苦労しました。20年かけて少しはまともな会社になることが出来ました。この間に理念を持つことが大切だと思うようになりました。哲学的になりますが、利益とは何か定義も大切です。一般に利益を大きくするためには売上を増やすか、経費を減らします。私は利益とは正常な経営活動をした後に残るカスと定義しています。払うべきものは払い、使うべきものは使い、社員の幸せを考えることが大切です。利益の大きさを競い合う風潮がありますが、カスを競い合っていると思います。そのために社員を犠牲にし、パート化を進め、派遣社員を増やし、作業の外部委託を進めるのは良いことではないと思います。 そこで私は社是を「いい会社をつくりましょう」に決めました。いい会社の定義が大切ですから、会社を取り巻くすべての人がよくなることにしました。お客様や社員はもちろん、取引先や地域の人もよくなる会社です。これは大きな売上や利益額、高い利益率、立派な本社ビルを目指す経営とは相反する経営です。これを社員に徹底するために「いい会社をつくりましょう」という本を作り、社員に配って読んでもらいました。社員のために作った本ですが、話題になり結構売れています。またポイントを名刺カードにまとめ社員に携行してもらっています。これを機会あるごとに読んでもらい、何を目指すかしっかり理解してもらっています。 皆で幸せ、快適になることを目標にしていますから、昨年より今年、今年より来年が「末広がりになるように経営」をしています。会社は永続することに価値があるのです。信用を積み重ねることや社員の首切りをしないことが大切です。老舗に学ぶことは多くありますが、老舗とはただ長続きしていることではありません。不易流行を経営に取り入れ、工場や機械のように変えていいものは最新のものに変え、社員やお客様を大切にすることのように変えてはいけないものは徹底して追及するのが老舗の経営です。バブルのときには大企業もおかしなことをし、はじけたあとに社員の首切りをし、事業の縮小や無理な仕入れの値切りをしましたが、やってはいけないことだと思います。会社が「木の年輪のように着実に成長」するのが本来の経営の姿です。当社には売上目標も利益目標もありません。これは木の年輪のように会社が成長するためです。 末広がりにするために、急成長はいけないと言い続けています。自分の代では150億の売上までだと考えていました。たまたまのブームで超えてしまいましたが、寒天は大きなマーケットではありません。大きくなると少々のヒット商品では伸びることが出来ません。また急成長すると経営者や社員の能力が会社の成長ほど伸びることが出来ません。社外から人を持ってくることがよく行われていますが、これは他社に迷惑をかけることになりますし、既存社員がくさる原因にもなります。そこで当社では新卒を採用し育てることにしています。経営にはスピードが重要だといわれます。確かに決断は早いほうがいいのですが、急成長はダメで、時間をかけて大きく成長し、事業を展開するのが正しいと思います。 ライブドアの元社長が儲けて何が悪いといっていましたが、人に迷惑をかけなければいいのですが、かけてしまったのではないのでしょうか。立派な人になりなさいとよく言いますが、立派と言う言葉の定義が重要なのです。立派と言うことは人に迷惑をかけないことだと思います。 社員を幸せにすることが、社長である自分の幸せになると実感しています。社員のために36年前から海外旅行を行っております。最初は香港でしたが、まだ儲かっていない時代からで一年おきに海外と国内の旅行を行っています。今年も社員のほとんどが参加し400名を超える人数で旅行してきました。社員が幸せを感じてくれると自然に人のためになりたいと思い行動してくれます。当社は8時20分出社なのですが、30分前には全員が出社し朝の掃除をしてくれます。長野市のパティオ大門にもお店がありますが、当社の社員がトイレ掃除をしています。公共の場もきれいにしようと思ってくれます。 バングラディッシュは貧しい国ですが、人々は皆幸せで自殺者は一人もいません。経済的に豊かな日本には年間3万3千人の自殺者がいます。人々は皆幸せになりたいと思っているのに、なかなか幸せになれないのだと思います。そこで一生懸命やることが幸せになることだと言うことを会社で教育しています。社員に良く話すことですが、ハワイに旅行に行けば一時間を大切にしてすごします。帰る日が決まっているからです。会社に100年カレンダーを用意していまして、人生も2万日しかないのだから毎日一生懸命に働くことが大切だと話しをします。誰かのためになることが、自分のためになると言うことも教えます。人に喜ばれたときに社員は幸せを感じることが出来ます。これが本当のCSであり経営であると思います。機械は持っている性能以上の仕事は出来ません。人間はやる気になれば2倍の力を出します。社員にやる気を出させることが重要です。 「社員の笑顔がいい」とよくほめていただきます。大変ありがたいことです。毎年お正月の信濃毎日新聞に社員の記念写真を掲載しています。社員の笑顔でいっぱいです。そのためにどう経営するかですが、竹風堂の竹村社長が一番すばらしい経営をされており、いつも教えていただいております。文化とは豊かさのことであり、文化を豊かにする経営が永続する経営になります。街づくり、メセナ、ボランティアの活動は経営に大変にプラスになります。大鹿村でボランティアの講演を継続していますが、フランス発祥の日本で一番美しい村連合の活動につながってきましたし、映画作りも実現します。伊那市で初めての美術館も作りましたし、店舗も街づくりの一環と捉えて建設しています。効率重視だけの経営ではダメだと思います。 バブル崩壊後は下請けをいじめるのがあたりまえになりました。今あたりまえが狂っていると思います。バブルの前は皆で伸びるのがあたりまえだったのです。木の年輪のように伸びるのがいいことです。気候の悪い年でも年輪の出来ない年はないのです。周年事業はおかげさまの気持ちで人に上げるのがあたりまえです。お金はいただけません。商品もたくさん売らなくても良いのです。無理にたくさん売ろうとするから経費がかかり、儲からないのです。あたりまえをきちんとやることが大切です。イエローハット相談役の鍵山秀三郎さんから掃除の大切さと凡事徹底の大切さを教わりました。凡事経営といっていますが、当社の朝掃除にもつながっています。 朝の掃除のあとそのまま外で朝礼を行いますが、当番を決めて3分間スピーチをします。これは社員が外でうまく話しが出来るようになってもらいたいという思いやりの気持ちで行っています。チリ、モロッコ、韓国に工場がありますが、社員もお金も出さない方針でやっています。相手の人をじっくり選び、技術指導のみに行くようにしています。社員はたまに行くのなら楽しいですが、長く駐在するのを喜ぶ社員はいません。 座右の銘は、二宮尊徳先生の「遠くをはかる者は富み 近くをはかる者は貧す」という言葉で、常に長期的な視野にたって種まきすることを考えて経営をしてきました。アメリカ流の4半期ごとの決算はダメだと思います。3年毎決算くらいがちょうど良いと思います。遠くをはかることの最たることは人を育てることです。新卒を採り育てることは、国の秩序を守ることであり、社会の秩序を守ることになります。 良いことを考えて、社員に知らしめることが大切です。知らせなければダメで、一回言っても社員は分からないものです。知らせる努力が大切で、一日中喋っている日もあります。 今まで経営の大切な資源は人、物、金といわれていましたが、これから大切なのは人とかたちのない資産だと思います。かたちのない資産は信用、企業イメージ、ブランド、モラル、営業力、開発力から成り立っています。当社は上場をしないと決めていますが、証券業界が利益重視の間違った考えをしているからです。人を評価するようになるのが正しい方向だと思います。100年のちにブランドとなるように17か条のブランド戦略を進めていますが、人に親切にする、値引きをしない、仕入先をいじめないなどのあたりまえのことから成り立っています。あたりまえのことをきちんとやることが大切です。 (文責/関 隆之) |
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