KCCの経営戦略<4>


ユビキタス(ubiquitous)情報社会への対応

◆ユビキタスとは?

(1)

ubiquitous/ラテン語で「遍在する」とか「いたるところに存在する」

現状のIT革命は、電子商取引や電子行政に代表されるようなバーチャル(仮想)な世界のIT支援。これに対しユビキタス社会は実世界、現実生活を支援する社会。

(2)

ユビキタス コンピューティングの概念は、1988年 米ゼロックス社のパロアルト研究所のマーク・ワイザー(Mark Weiser)によって提唱される。1933年に書いた論文の中で「どこでもコンピューターにアクセスができる世界」と定義。
ubiquitous computing = ubicomp 国際シンポジュウムで2001年より使用

(3)

ユビキタスはITの第3の波

第一の波「メインフレームの時代」/高価で巨大なコンピューター1台を複数の人による共同使用時代
  コンピューター>人 

第二の波「パソコンの時代」/パソコンが普及し1人1台のコンピューターを使用する時代
  コンピューター=人 

第三の波「ユビキタス社会」/あらゆる人がどこでもコンピューターを意識しないで使用できる環境
  コンピューター<人 

(4)

ユビキタス コンピューティングによる無限の可能性の時代が始まる。(2005〜2020年)

15年前、東大の板村教授によって始められたTORONプロジェクトの「電脳住宅」の体験学習。

東京有明のパナソニックセンターの情報家電体験室の家庭内情報端末「Kステーション」。パネルタッチ式で家族全員の健康チェック、スケジュール管理、各家電製品のコントロール、戸締り確認、冷蔵庫を利用した料理メニューのレシピ作成から賞味期限の管理など。「ヘルスケア」「コーディネイト」「クッキング」「セキュリティ」などの絵表示パネルで使用。

象印マホービンの新サービス「みまもり ほっとライン」ポットの電源を入れたり、給湯ボタンを押すたびに底に内蔵した通信機が無線信号発する。10分単位のグラフが日ごと週ごとに表示され日々の生活状況をチェックする。(一人暮らしの人をみまもりチェックするシステムとして利用されている)

(5)

ユビキタス コンピューティングのインフラと新技術

●インフラ

(イ)ブロードバンド(高速大容量通信)

ADSL(2002.9.30現在、422万3千件で前年同月比6.5倍)・光ファイバー

(ロ)ホットスポット

コンビニ・駅・喫茶店などに無線LAN(構内通信網)の基地局を整備中。ノート型パソコンやPDAなどで接続活用。2005年宇宙開発事業団を中心に「超高速インターネット衛星」を打ち上げ、このホットスポットを全国に拡大し都市と地方の「情報格差」(デジタルデバイド)を是正する方針。

(ハ)ホームサーバー型コンピューターの普及で「情報家電」を接続「Kステーション」の実現

(ニ)IP電話に専用番号の割当受付開始

10月1日から総務省で受付開始。コンピューターに電話番号050-○○○○-○○○○が、IP電話契約をプロバイダーとすればつけられる。一般の電話番号受付は、早いところで来年2月開始(フュージョンコミュニケーションズ)。初期設定費用500円、月額料金380円、コンピューターから一般電話へは全国一律3分8円。一般電話からコンピューターへは通常電話料、コンピュータからコンピューターへは無料。アダプタをつければ音声を一般電話機を通しても利用可。

●新技術

(イ)無線ICチップ(無線ICタグ)

IC(集積回路)チップとアンテナで構成。チップに個体を識別するID番号などの情報を蓄積。小さいものだとわずか0.数ミリ角。タグ(荷札)全体で2.5ミリ角の超小型品も。電池は内蔵せず、外部の読み取り装置が発した電波をアンテナが受けると電磁誘導で自家発電して、チップ内の情報を無線で発信する。バーコードよりはるかに多くの情報を書き込める上、非接触で読み取れるのが特徴。
※すでにヨーロッパとアジアの航空会社が空港の荷物管理で採用している。荷札と搭乗券にチップが埋め込まれている。
※次にトレーサビリティー(原料、生産履歴などの追跡作業)に採用研究中。また環境問題やユニバーサルデザイン社会への応用拡大の可能性大。

(ロ)シートコンピューター

文字や動画を表示する極薄の液晶画面に、CPUを組み込む技術を世界ではじめて開発。現在十数ミリの厚さが、わずか1ミリのシート状になり、2年後に実用品が期待される。この技術により情報家電のドアや極薄の名刺サイズテレビ、極薄携帯電話が実用化される。基板上にシリコンを張ることでCPUを電気駆動させても液晶に影響しない。(システム液晶)

(ハ)トランスコーティング

IBMが開発したアプリケーション技術。ネットワークからコンテンツを発信する時、それぞれのネットワーク機器に向けて自動的に変換し発信する技術。

(ニ)ロボット技術の開発

ASIMO、AIBO、キスメット、バイリンガル(タカラ)

(6)

ユビキタスの課題と未来

●コンピューターのアドレスは足りるのか。

現在のIPバージョンIPv4は32ビットのアドレス体系で約43億個のドメイン(アドレス)を管理。新たに1994年IETFのトロント会議で不足分を補う128ビット体系のIPv6を追加し、新たに43億個の4乗個までのアドレスが管理可能になった。すでにこの方式による情報家電の試作品ができている。問題はいつ切りかえるか、併用するか。

●セキュリティとプライバシーは守れるか。

(1)

認証技術 ID・パスワードによる電子証明書。指紋・音声・虹彩・DNA。

(2)

暗号化技術 この単独技術では無理/解読技術の高度化。

(3)

電子署名技術 秘密キーと公開キーのペア作成。秘密キーで署名。そこへ特殊な関数に基づくデータを追加する。

●ヒューマンインターフェイス

従来の
ヒューマンインターフェイス

ユビキタスの
ヒューマンインターフェイス

入力

キーボード、マウス、etc

音声入力、電子ペン、etc

出力

CRTディスプレー
液晶ディスプレー

音声出力
電子ペーパー、etc

特徴

利用するにはある程度の訓練が必要「コンピューターを使っている」と認識する。

初心者でもすぐに利用できる「コンピューターをつかっている」とあまり意識しない。

●ユビキタス・リテラシーの必要性

デジタルデバイド「情報格差」人による格差/環境による格差/地域間格差
コンピューターの基本的概念と必要性や使い方教育など


平成14年10月25日 KCC保坂

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