地域商業文化を創造する会 
2022年 大阪・京都 研修旅行のご報告
〜 伝統と革新をめぐる旅 〜


令和4年11月 発行者:宇都宮 司

昨年はコロナ禍の折、1泊2日の行程で実施した研修旅行でした。依然、特効薬は開発に至っておりませんが観光業もようやく活気を取り戻しつつあり、情勢を鑑みながら例年同様2泊3日の行程で開催することとなりました。直前まで行程が未定なところもあり参加者の皆様にはご心配をおかけいたしました。クイントブリッジはじめ機会を頂けた企業様には感謝申し上げるとともに、自社事業に対して新たなヒントが見出せたのではないかと思います。3日間の行程で無事開催できたことに厚く御礼申し上げます。

■旅程

◆11月9日(水)

■ QUINT BRIDGE(クイントブリッジ)

 NTT西日本が本社移転に合わせオープンイノベーションの推進と市場全体の活性化に貢献するために大阪・京橋に創設したオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE」。名前の由来は「Quintillion(百京)」と「Bridge(橋)」で、NTT西日本が企業・ベンチャー・自治体・大学などとの架け橋となり、3月のオープン以来160件を超す新規事業の共創や地域課題の解決策を導いています。
 将来の予測が困難な時代で社会課題や地域課題、産業課題などがより複雑化しており、独創的なアイデアを取り入れる新たな手法やアプローチの必要性が高まっています。
 2時間ほどでしたがNTT西日本様がQB共創メンバーに声掛けをして頂き「企業が抱えている課題」について交流会を開いていただきオープンイノベーションを体感しました。QB共創メンバーの方々は日ごろからハッカソン(短期間に集中してサービスやシステム、アプリケーションなどを開発し、成果を競う開発イベントの一種)に参加されている方も多く、社会を良くする新しいビジネスを創造したい人が集まっています。自社の枠組み・古い体質から脱却できない中、提案頂いた意見は新しいサービスや機能に関するアイデアやヒントが多数あり、有意義な時間となりました。今回の場を設定頂いたNTT西日本の下川様はじめ参加いただいたQBメンバーの方々に感謝です。

◆11月10日(木)

京都駅で迎えてくれたのは和装に身を包んだ下戸さん。とても物腰が柔らかく多くのリピーターがいる京都旅案内人。少人数の方に寄り添うアテンダーとして人気で「京町家で地元に受け継がれる食とめぐり逢う旅」というテーマで2日間ガイドしていただきました。

■澤井醤油本店

 祇園や西陣など瓦屋根の町屋が残る界隈で、玄関の屋根に「鍾馗(しょうき)さん」が置かれる風景は京都らしさの一つ。その昔、三条の薬屋が立派な鬼瓦をつけたところ、邪気が跳ね返って向かいの家の奥さんが病になり、対抗するため鍾馗像を屋根に据えたら完治したそうです。その後は魔除け・厄除けとして京都の街に広がりました。鍾馗と商機の読みが同じなので商売繁盛の願いも込められているそうです。澤井醤油さんの鍾馗さんを見ながら店内に入ると醤油の香りが広がっており脳裏に空腹を伝えます。扱っている商品の後ろに大きな木樽が目を引きます。明治12年創業の老舗で昔ながらの製造方法・道具を使い秘伝の味を守り続けられています。建物は景観重要建造物に指定され京町家の文化と伝統を維持されていました。

← ←鍾馗さん

■本田味噌本店

 創業はおよそ200年前の天保元年。初代、丹波屋茂助の麹づくりの技が宮中に見込まれ、宮中料理に味噌を献上したのがはじまりだそうです。江戸に宮中が移る際も動かず京都で商売を続け、後に本田味噌の白味噌が西京味噌と呼ばれるようになったそうです。
 現在はバイオ技術、製造管理プログラムを駆使し、環境に配慮した最新設備と衛生管理、食品安全マネジメントシステム認証の新工場で製造されています。味噌造りに重要な麹造りや熟成温度管理も自動プログラムで行えるようになった。味噌づくりに職人の勘や経験が必要でなくなったわけではなく季節によって細やかに変化する醸造のプログラムには、今まで培った経験が十分に生かされ、最終的な仕上がりを判断するのは職人の目だそうです。西京味噌は当然ながら自慢の味噌をフリーズドライして麩焼に包んだ「一わんみそ汁」も人気商品とのこと。

■山中油店

 江戸時代から200年近く続く全国的にも珍しい油の専門店で当時の面影ある建物は登録有形文化財にも指定されている。油が貴重であった江戸時代は食用よりお灯明として使われていました。明治以降油を使う料理が大衆化し食用油の需要が増大。油の卸販売業として受け継がれています。現代では建築工芸用の油や椿オイルなどの美容油も取り扱われているそうです。灯→食→住→美へと油の利用も幅広く変化してきました。
 ギャラリー粲宙庵で歴史を説明頂いた後、古い空き家となった町家を改修し新しく再生された飲食店【綾綺殿】や宿泊施設【平安宮内裏の宿】を見学しました。京都らしい町並みを残すことにも山中油店は貢献されていました。

■京菓子司・金谷正廣

 天正十五年 北野天満宮の大茶会の際、豊臣秀吉公が真盛豆を召され、「茶味に適す」と賞賛された。明治初年、初代金谷正廣が西方尼寺からその製法を伝授され、工夫を重ね銘菓として茶客通人に賞賛され今日に至っている。真盛豆は煎った丹波産黒豆に、蜜と大豆粉を幾重にも重ね、仕上げにきめ細やかな青のりがかけられています。直径1.5cmほどの半生菓子で、ふんわりとやわらかい歯ごたえ。中に入っている香ばしい黒豆との相性も抜群で、上品で素朴な甘さで喜ばれています。最近では若い女性を中心に、「マリモや苔玉のようで可愛い」と、ブログやツイッターで紹介しているのが見かけられるそうです。
 ここまでで既に9,000歩ほど歩いて来たため皆さんの足取りも重くなってきましたが、昼食に期待しながら先を目指します。大通りを少し入ると住宅街ですが碁盤の目のように道路が走り一方通行がとても多く、狭いわりに車の通行量がとても多いのが印象的でした。

■今原町屋(昼食)

 午前中に訪問した醤油・味噌・油を使用し、京の味を凝縮したランチコースを戴きました。江戸時代から地元で親しまれてきた老舗の食材を存分に味わえる工夫を凝らした料理に店主が拘りをもって全国から集めた日本酒が多数揃っていました。昭和4年に建築された今原町家は100年ほど経った今でも建築当時の姿をほぼそのままに伝えています。中庭をゆったりと眺めながら、心やすらぐ時間でした。
 現在も住居されている京町家で、飲食営業を行っている奥座敷以外はすべてプライベート空間ですが、特別にご見学をさせて頂きました。モダンな洋間を備える二階には、京間10畳の本座敷、屋久杉天井の控えの間、昭和をテーマにした和室などがあり下戸さんのご紹介PVを見ました。

■エクシブ八瀬離宮(宿泊)

 京都駅から北東、近くには叡山鉄道のレトロな八瀬比叡山口駅があり、自然豊かで紅葉の始まった比叡山のふもとにエクシブ八瀬離宮は位置します。自然の中に建つ現代の離宮をテーマにしたホテルでは天然温泉とレベルの高い食を堪能することが出来ました。今回の宿泊にあたり遠藤会長のお力添えに心より感謝いたします。
 夕食はイタリアン料理で一日の疲れを癒しながら話に花が咲き2日目の夜は更けていきました。

◆11月11日(金)

■ 妙心寺

 京都市右京区花園妙心寺町にある臨済宗妙心寺派の大本山の寺院。1342年室町時代花園天皇が創建し、全国に14の本山がある臨済宗の大本山である。
 境内には明智光秀の叔父の密宗和尚が明智光秀を弔うために建立したとされる重要文化財の浴室なども残っています。
 法堂には吉田兼好の『徒然草』にも記されている日本最古の鐘楼が展示されています。その天井には加納探幽が描いた直径12mの雲龍図が描かれ、360度どこから見てもこちらをにらんでいるように見える絵は圧巻で、龍の尻尾の方から見ると空へ上る姿、反対側から見ると降りてくる姿に見えます。
 妙心寺は多くの寺院の集まりであることが特徴で46の塔頭寺院が妙正寺の東・北・西を取り囲んでいます。
 塔頭のひとつ退蔵院では美しい庭と国宝に指定されている瓢鮎図が有名で枯山水庭園「元信の庭」を方丈内部からご拝見し、徐々に秋色に変わり始 めた庭園を見ながらお抹茶を頂きました。
 「阿吽庭」「切石の庭」と呼ばれる枯山水庭園のある大心院では座禅体験をしました。日常の雑踏から離れ、心を整えると鳥のさえずりが聞こえ落ち着けるひと時でした。
 妙心寺境内の東側に位置する東林院には十数本の沙羅双樹からなる「沙羅林」があります。梅雨の頃には花が青苔の上に落ち風情を楽しめます。JR東海のCMにも採用されたことのある庭園と住職が作る精進料理が有名で、こちらで昼食を頂きました。


■つえ屋

 昼食後、今回の研修旅行最後の企業である「株式会社つえ屋」様を訪問しました。京都・大阪・東京で高級杖店を営まれ店舗には所狭しと20万本1万種類を超えるステッキ・杖を販売している。通販ショップ・・・ZIZITOWNの運営や移動販売車での杖販売などユニークなビジネスモデルがマスコミにも注目されている。がっちりマンデーやガイヤの夜明け、月曜から夜更かし、サンデージャポンなどなどで取り上げられています。
 坂野社長は経営難の重圧や過労から視力が落ち重度の視覚障害になられ、視覚障害者のリハビリセンターで多くの方が明るく懸命に頑張っている姿を見た。その際利用者の声を汲み上げお客様目線で品揃えを行うようになり業績がV字回復したそうです。お客様が見たことの無い杖を手にして笑顔で喜ぶ姿に無上の喜びを感じられるとのこと。社長の人柄や熱意は説明をしていただく姿から自然に伝わってきました。

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